プロフェッショナル

「プロフェッショナル仕事の流儀」先週放送分を見る。
今回は、ベストセラーを次々と生み出す名物編集者。かつては大手出版社に所属し、のちに新たな出版社を仲間とともに立ち上げた*1
「編集者=助産婦」
作家にとって、自分の作品は子供のようなもの。そして、読者にとってもそれは大切な宝物となりうる。だから自分は、作家が新しい作品を生み出すための手助けをする助産婦だと考える。
だからこそ、作家ととことん付き合い、作家達の気持ちをほぐすように勤める。飲みにいくのに付き合い、電話や手紙で励まし、作家が作品に向かえるよう、心を砕く。
「全身全霊で、ほめる」
作家の新しい原稿に目を通したあと、彼は自分が感じたいいものを徹底的にほめる。
心にもないことは、決して口にしない。気になる点は、ほめて伝える。
そうすると、作家はちゃんと心を汲んで、ほめた方向に作品を良くしてくれるという。
「熱を広げていく」
ある作品が売れるようになるには、誰かがほめることが必要だという。
書評や、広告などのほかには、大きいのは口コミだという。
口コミで、人から人へ伝わるとき、それは大きな熱いうねりとなる。編集者は、その熱を広げていく手伝いをするのだ。
作家がスターなら、編集者はそれを盛り上げる黒子になる。
「裸になるしかない」
かつて、自分も作家を目指す文学青年だった。けれど、文学誌の新人賞の投稿はすべて落選し、せめて本に携わる仕事がしたいと、大手出版社の編集助手のアルバイトを始めた。
そんな時、ある作家の作品に出会い、ほれ込んだ。
どうしてもその人に原稿を書いてもらいたくて、編集助手という身でありながら、直筆の便箋10枚につづって手紙を出した。そして、後日会ってもらえることになった。
いざ新宿の待ち合わせ場所で出合ったその人は、圧倒的な“オーラ”を背負っている。若輩の自分にできるとことは、“裸になってぶつかること”だけだった。
ただひたすら、作品が好きであること、原稿を書いてほしいことを訴え、どうにか原稿を書いてもらえる約束を取り付けた。
しかし、3ヶ月経っても原稿は来ない。不安に駆られても、ただひたすら、作家に付き合った。
そんなある日、その作家が芥川賞の候補になりながら、落選した。その日はちょうど雨。若い彼は、作家がいた料理屋の前でずっと待ち続け、作家が出てきたところで一言、「残念でしたね」といった。
その後、その作家から原稿が届き、二人で作り上げた短編作品集は、直木賞を受賞した。
その作家とは、今も18年越しの友人関係が続いている。
「小さな握手」
そして、無頼派として知られるある別な作家の、3年越しの800枚の大作が、もう少しでクライマックスというところで、手が止まってしまったとき、彼は直筆のはがきを書いた。そのはがきこそ、孤独な作家との“小さな握手”だという。
その作家はしばらくして、止まっていた原稿を書いてくれた。
彼は今日も、作家と二人三脚で新たな作品を生み出していく。

*1:実は「幻冬舎