読了

「山怪弐」読了。
一通り読んだ感想として、あからさまな怪談話はほぼなくて、山を生活の場所とする人、山を仕事場にする人が主に体験した不思議な話という感じ。
正直、一番ヤバいと思った話は、「山怪」に載っていた“冬場にうさぎ猟が終わった後の宴会の席で喧嘩になり、「表に出ろ!」ということになったあとの顛末”だった。猟師の村だけに猟銃を持ち出しての撃ち合いになったというのだ。
本文から引用するに、“日活アクション映画ばりの雪原の銃撃戦”になって怪我人が出たという。これは確かに物の怪なんかよりはるかに恐ろしいわ、リアルで。もちろん、現代の話じゃないけどね。
でも、この銃撃戦の目撃者が普通に証言している。つまり、ほんの数十年前の話*1なのだ。
このシリーズに収められている話は昔話じゃなくて、下手をすると平成に入ってから起こったらしい話も収められている。つまり、“生きている”話なのだ。ただ、急速に失われつつある話ではあるのだが。
でも、つくづく“勘の鋭い人”にとっては山は異界の入り口なんだな、と思う。山に慣れているはずのベテランが、ありえないミスを犯して迷ったりする実例が載っている。
これも、本文でたとえ話が載っているが、「街中で言えば、最寄駅から自宅まで帰る途中で曲がり角を間違える」ようなミスを犯すのである。東北のマタギの人々の話だと狐の仕業ということになっているが、それにしても信じられないミスだ。
「山怪」シリーズ、もう一回通しで読みたいな。繰り返し読むことによって、自分の中で、何かインスピレーションがわいてきそうだから。

*1:もちろんいわゆる“戦後”の話