プロフェッショナル

「プロフェッショナル仕事の流儀」先週放送分を見る。
今回は、常識を覆すりんごの栽培をするりんご農家。
りんごというものは病害虫に弱くて、消毒用の農薬や化学肥料などが欠かせない作物なのだという。
ところがこの人は、化学合成された農薬や肥料を一切使わず、しかも根元は雑草が生え放題の状態。
それでも、りんごは実ってくれる*1
雑草が生え放題なのも、逆にそこに小さな生態系ができ、益虫も集まってきて害虫を食べてくれるので、大きな被害が出ないのだ。
長い間科学的な薬を使っていない畑のりんごの木は、酢をかけただけで病原菌を寄せ付けなくなる。
けれど、実ってくれるようになるまでに、8年もかかった。
6年目の夏、行き詰ったその人は、死に場所を求めて岩木山に登り、そこで“自然の木には誰も農薬や肥料をやっていないのに、虫もつかずにちゃんと実る”事に気づき、それがふかふかに柔らかい土にあると思い至った。
「育てない 手助けするだけ」
それが、信条。ただひたすら、りんごに対して愛情を注ぐ。
花をつけるのも、実を生らせるのも、すべてはりんごの木がやっていることで、自分はそれを手助けしているに過ぎない。
「答えはりんごに聞け」
その人に、弟子ができた。
無農薬栽培を始めて半年、その弟子の畑に異変が起きた。
普通の農家は、スプレイサーと呼ばれる大型機械を使って薬を散布する。
しかし、大型機械は土を踏み固めてしまうため、その人は手間隙をかけて手作業で酢を散布している。
弟子になった人は、言いつけを守らずに、ついスプレイサーを使ったのだ。
異変を前に途方に暮れる弟子は、師匠であるその人に電話で相談をした。答えは、来年のためにもう一度酢をまくように、というものだった。
弟子は、師匠の言葉をかみ締め、結局手抜きをした自分の未熟さがこういう事態を招いた、と反省した。
彼は、最後の酢の散布を手作業で丁寧に行った。
わずか数個しか生らなかったりんごを手に師匠の元を尋ねてきた弟子に対し、その人は弟子のりんごを食べて「うまい」といい、「一歩づつ階段を登るようにしていけばいい」と語った。
その人の畑は、今年もたわわに赤いりんごが実っていた。

*1:そのりんごは不思議なことに、いくら置いておいても腐らない。いつの間にかドライフルーツ状になってしまう