プロフェッショナル

「プロフェッショナル仕事の流儀」今週放送分を見る。
今日は、写真家。それも、最近広告写真でこの人の作品を見ない日はないのではないかというほどの、人気写真家だ*1
「写真に命を吹き込む」
この人が写真を撮るとき、被写体となる人物が演技をしているうちは、シャッターを切らない。演技が途切れ、自然な表情が出たときに、初めてシャッターを押す。
人はそれを「サムライの真剣勝負」と呼ぶ。
写す者と写される者との真剣勝負。そのせいか、この人は現像も自分で行う。プロの技術者に現像を任せる写真家も多い中で、20年前から愛用のフィルムカメラで取った写真を、自分の事務所の地下にある暗室で、自分の手で現像する。
自分を信じる」
最近は、TVCM撮影にも参加することが多くなったが、重圧のかかる撮影現場で心がける流儀が「自分を信じる」こと。映像の中に、生き生きとした動きが映しこまれない限り、OKは出さない。
かつて、アメリカの写真家が撮ったポートレートに心を動かされて写真家になった二十代、仕事がなくてある広告ディレクターに自分の写真を見せたところが「向いてないよ、広告に」と全否定されたという。
その後ファッション業界で仕事をするようになり、徐々に人気写真家となっていったが、被写体のモデルにポーズをつけてただ撮るだけの仕事に、苦しさを感じていた。
そんなとき、ある大物文学家をモデルにウィスキーの広告を撮る仕事が舞い込んだ。
その文学家の自宅に行き、気難しいとされる文学家と、カメラを挟んでにらみ合うように対峙し、文学家がふと気を許して力を抜いた瞬間、シャッターを切った。それの作品は広告業界の話題となり、彼は被写体と真剣勝負をするような、今の形に変わった。
「カメラマンにできること」
ある重要なTVCMの撮影の仕事が来た。
そのとき彼は、簡単なシーンを先に撮ろうという監督の主張に反対し、シーンの順番を変えずに撮ろうと主張した*2
そのほうが、モデルの女性の自然な感情の流れが撮影できるという考えからだ。
結局、順番に撮ることになり、撮影はスタートしたが、モデルが泣くことができず、最初のフィルム10分を使い切ってしまった。
彼は、カメラマンの自分が出来ることを考え、撮影したフィルムを再生してみた。するとモデルは、感情が高ぶってきたときに目線を上げて鏡に映った自分を見てしまい、それで我に返ってしまっているのだと気がついた。
彼女にそれをアドバイスして、そのあとの撮影では、彼女は10分という時間内に涙を流し、さらにきちんと演技した。
完成したCMでは、監督はあえて涙を流す瞬間のカットは使わず、直後のすべてを吹っ切るように顔を洗いなおした演技を採用している。
彼は今日も、“一瞬を永遠に残す”ためにシャッターを切る。

*1:サントリー伊右衛門」やSHARPAQUOS」などのポスター広告はこの人の作品

*2:最初のシーンは、モデルが涙を流すシーン。“自然な涙で”という難しい注文だった